2020年7月20日events Hello! New Normal イベントレポート

【イベントレポート】地域と都市をつなぐ新しい観光:Hello! New Normal 沖縄観光産業のニューノーマル。第2回

Hello New Normal企画、沖縄観光産業のニューノーマル。シリーズ第二弾の今回は、「地方と都市をつなぐ観光」と題し、アソビュー株式会社代表取締役CEO 山野智久氏、ANAホールディングス グループ経営戦略室 事業推進部長 津田佳明氏をゲストに迎えてお話をお聞きしました。

モデレーター/案内役は中村圭一郎さん(ISCOフェロー/沖縄観光の未来を考える会事務局長)

津田佳明氏「未来のエアライン、アフターコロナにおける旅=移動の価値」

ANAの航空便の略称はNH。ANAじゃないの?と疑問に思ったことはありませんか?実は、NH=日本ヘリコプターの頭文字だそう。そんな長い歴史を持つ保守的なエアライン業界では、「全員イノベーティブ」という状態は考えにくいという特徴も。

しかし、「輸送業」という流れの中で、来るべき流れはわかるはず。
そこでANAとしては、輸送業に「破壊的(Disruptive)」な存在は何か?と考えたそうです。
(最終的には「どこでもドア」が業界を破壊するかもしれませんが!笑)
キーとしてANAが着目いているのは以下の4つだといいます。

①価格破壊:つまり、LCCのような存在。PeachはANAが作っているので、このように少しずつ価格面でも先取りを始めている。

②利便性:ドローン。今は小型、無人地帯の目視外飛行できるくらいの段階で、実証実験中。いずれは空飛ぶ車やりたい!とも。下が海や水なら比較的やりやすい条件となるそうで、。この条件下では、沖縄は有利となるため、2025年以降に実行したいと考えているそうです。

③宇宙:超高速!宇宙旅行ができるように、航空整備士などの派遣もしている。アジア最初の宇宙港を設置したり、宇宙旅行の会社と提携したり準備中です。南と東が海になっているところがよい→これも沖縄は好条件だと思っている。

④新概念:アバターで旅行!(そもそも移動しなくていい!)
アバターにも色々と形があるようです。たとえば、コミュニケーション型は会話などのコミュニケーションができるタイプ。スキルシェア型は、ロボットを背負ってるみたいなビジュアル…、そして実際のお出かけに困難を抱える方々の代理となるダイバーシティ型、そして釣りなどのアクティビティやエンタメができる実践型など。

できれば自分たちでやりたい!ということで、正式に会社としてプロジェクト化しているそうです。
これらの内容は、新型コロナウイルスの感染拡大には関係なく、先を見通して先手を打ってきた事業だそうで、堅実でありながらも、確実に先を見据えた行動ができるのはさすがですね。

●アフターコロナにおける移動は減る。単純に元に戻るわけではない。

これから起こるであろう変化に先手を打ってきた中でも、やはり新型コロナウイルスの影響を全く受けないわけではありません。移動は確実に減る、という前提で、手法をシフトすることも同じく重要です。

その中では、リアルが無理ならバーチャルで価値を提供する。関係人口などの新しい関係性をつくるなど、パイを増やすことも行っているといいます。また、リモートワークの推進・普及により、どこでも仕事ができるようになることから、ANAシェア旅、サブスク型の宿泊プランやリモートワーク環境を提供するADDressやHafHとの連携も行っているそうです。

色々な新しい旅/移動/交流の形を提供しているANA。沖縄でやりたいと思っていることもたくさんあるようです!

山野智久氏「コロナ禍における経営者としての判断、そして今大事だと思っていること」

アソビューは様々な体験を売るサービス。しかし、4月、5月は昨年の売上から95%マイナスとなったそう。

コロナ禍で、経営者としてどうすべきかの判断を迫られた。そこでできたのが、「アソビュー!おうち体験キット」。これは、おうちで本格的な体験が楽しめるようなコンテンツを提供するサービス。
例えばおうちで陶芸体験などが人気だそうです。外での体験と同じクオリティで楽しめるものを、もともと人気のあった作家さんと共に自宅で、しかもオーブンレンジで作れるキットを開発したとか。やり方も実践動画のようなもので教えてくれるそうです!

また、既存のコンテンツをオンライン化して満足度が下がらないものを考えたとき出てきたのがオンライン似顔絵体験特集。これは描かれてるのを見られないので、はずかしくない!というメリットが。実はオンラインの方が相性が良かったのかも?とのこと。

●観光産業全体のプラットフォームとして社会的リスクを回避

また、アソビューが取り組んだのは自社のサービス転換だけではありません。観光産業全体のプラットフォームとして、コロナ対策実施済みのレジャー観光施設を表示する機能をリリースしたり、各省庁、専門家と連携してガイドラインを作成するなどの活動を行いました。ガイドラインは、提携先に無料配布・オンラインで動画レクチャーを行い、1500ほどの施設が感染症対策を行うことができ、対策済みの施設として紹介されているそうです。

コロナ禍は、一時的なものかもしれませんが、いつまで続くかはわかりません。感染防止対策と経済を回すことがコロナ禍においては非常に重要だと考えているそうです。各産業の中の経営者は、どのような業界転換をし、いかに損失を補填するかの判断をすることが大事だと言います。

観光産業はこれからどう変わるか?―DXと旅の本質―<クロストーク>

ひとまずコロナの有無に関わらず、変化は不可避です。これまでは、旅行業者がすべてパッケージにして売っていたものが、自分で飛行機、ホテルやアクティビティの組み合わせを選ぶ方式(ダイナミックパッケージ)になってきました。

それが、今ではコロナの影響を受けて、本当に自分にとって価値の有る「旅」、「体験」重視になってきている。現地でどのような体験ができるか?どのような人に会えるのか?に価値が移ってきています。
加えて、ITリテラシーもかなり上がってきています。オンラインで色々なことができるようになっているので、乗り遅れることはできません。

実は旅の重要性や旅行に求める本質は変わらないはず。人間の長い歴史上もコロナは永久には続かないだろうとも思っているので、今はひとまずのコロナ禍をいかに乗り越えるかを考えるだけです。
感染拡大が終わるとしたとき、旅行で実現される五感を通じて得られる体験や思い出の価値は、人間の根本的な欲求であり、変わらないでしょう。
量が減る懸念はあるが、反面増えることもあります。例えば、旅行と生活との隔たりがなくなることにより、長期滞在は伸びてくるだろうと考えられます。この用なチャンスを活かしていくことが重要ですね。

また、人と距離を取ったり、手洗いやうがいをするなど公衆衛生の意識は高くなっています。この傾向は続くと思うので、そういった店でDXが求められるはず。例えば誰が持っていたかわからない紙幣よりは、電子マネーを使うなどは推進されていくでしょう。みんなのITリテラシーも高まっていることもあり、公衆衛生と関係したDX推進は進みます。そこへの変化と対応は必要になってくるはずです。

DXを観光に、という話をする際には、どのテクノロジーを活用したいかより、何をしたいかだと思います。どういう理想像を描いているのか?を先に持ってこないといけません。

リテラシーのベースを上げるには、実用的なところからだと思います。現実的なことを言うと、ワークスペースのコミュニケーションをSlackなどでやっているか?観光事業者なら、SNSを自分たちで運用したことがあるか?オンライン決済を使っているのか?というところからだと思っています。
レジャー施設はアソビューに登録するところから始めてほしいですね!

バーチャル体験は「会った」経験を作れるか?―弱みと強み―<クロストーク>

ANAさんは、かなり先々を見据えた上で事業をされていますね。リソースの配分には気を使われるとおもうのであすが、中長期とはいえ、実現可能性が高く、かつビジネスとしても回収できるテーマは何だと津田さんは考えていますか?

アバターですね。医療系や介護系のニーズが増えている。患者さんに会いに行くのにアバターをつかって面会するなどにも使えます。
また、移動と生活が近くなること。特に東京はとても「密」なので、地方で働きたいという人も多く出てくるはずです。ただ、受け入れるほうの土地は不安なはずなので、水際対策や来たあとのトレーシング的なフォローもしなければいけません。観光産業のICT化・デジタル化に対応するビジネスは可能性があると思っています。

(山野)映像とコミュニケーションだけだと、ZOOMで解決したりする。しかし、感情が動くときはリアルなはず。アバターはその間をつなぐものだと感じています。でも、かえってアバターがあることで逆にリアルでやらなくてもいい、みたいなことも考えられます。そのバランスはどこにあるのでしょう。

最後は五感だと思います。今は視覚と聴覚(あと味覚くらい)は伝えられる。でも、その人の存在を近くに感じるかどうか?ではないでしょうか。ZOOMは「話した」感覚はあるが、「会った」感覚にはならないのです。
動きが出てくると、その人の存在をより感じる。質の高いコミュニケーションができるかどうか?がキモだろうと考えます。

提供されてきた価値を買うのではなく、自分たちがやりたい体験ができるのかどうか?になってきているのかもしれませんね。(中村)

気分に合わせてメニューをトータル工程提案してほしいというニーズがあると思いやってみたサービスがあったが、そこにニーズは無いことに気づいた経験があります。「選ぶのも含めて旅行だ」とみんな思っているんだと気づきました。「どこにする?」みたいなやりとりも含めて旅行なのかもしれないと思っています。

旅先とかで急に決まってやったことの方が思い出に残ることも多いですしね。偶然性も含めて旅の本質だろうと思います。

オンライン体験の価値を決める要素とは
<クロストーク>

[noteの記事についての質問から]オンライン体験は成功しないと言ったわけではないが、既存の体験の延長線上につくるだけだと難易度が高いと思っています。例えば、SUPツアー中の映像をお届けします。みたいなものは、それを見たところで、何が伝わるのか実感できない。

実際にオンライン上の投げ銭で活躍しているのは、芸能人やコンテンツ力がある人たちです。オンライン完結でも価値があると思ってもらわなければいけないので、ただの観光ガイドの配信だけ、といったものだと難しい。そのため、アソビューでは、付加価値として物を送ったりしています。

水族館などの中継の例でも、飼育員さんがカメラを持って歩くのを見ているだけでは、能動的に自分が動いている感覚にはならないですね。それなら、思いっきりバーチャルな方向にふれる方が価値が高いのかもしれないとも思います。

ものが送られてくるというのは良いですよね。時間が決まっていて、人が教えてくれるといったこともできると、とても良いと思います。

最後に

変化を作りだしていくために、多少今のルールを変えなければいけないなど、新しいことを生み出すパワーが必要になっています。それは東京だけではなく、色々な地方や地域でやらないと。
共感する人たちが集まって、実証実験のようにトライ・アンド・エラーでやっていく。そんな仲間が増えていくといいなと思っています!

沖縄は観光地として圧勝してる感があり、心配はしていません。しかし、コロナ禍においては岐路であることは明確なので、観光産業一本だけではないビジネスのあり方をこの期間中はしっかりやること。
ポートフォリオを分散して耐えていきましょう。あとは、良さをきちんと発信できれば、人はついてくると思います。

「旅」の本質に迫りつつ、これからの変化を見据える、とても深い議論になりました。ぜひ、引き続き沖縄でこのお話をいかに引き継ぐかの議論を続けていきたいですね。

「沖縄観光産業のニューノーマル第3弾」は、8月17日に開催します。

是非、イベントでインプットし、Lagoonコミュニティに参加してアウトプット(議論)しましょう!!

詳細・参加申込はこちら。
https://lagoon-koza.org/archives/7022